大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 昭和54年(行コ)4号 判決

控訴人(原告) 小島露

被控訴人(被告) 廿日市税務署長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和五一年五月二〇日付でなした控訴人に対する原判決別紙(一)記載の各月分にかかる物品税及び無申告加算税の賦課決定処分をいずれも取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり附加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(当審における控訴人の主張)

一  原判決は、課税の対象となつた控訴人製造にかかる本件製品の形状は、原判決別紙(二)の〈1〉ないし〈8〉のとおりであると認定している。しかし、右別紙(二)の〈3〉の製品は控訴人の製造したものではない。

二  営業用の物品は、物品税法上の課税物品ではない。本件製品は、写真撮影業者の撮影用小道具として、営業専用のものであるから、不課税物品である。

三  本件処分は、前記の点においてすでに違法なものであるが、その他に次の各事実を指摘しなければならない。

(一)  昭和二三年頃より、小島工芸という名で撮影用小道具である本件製品の製造販売を行つてきた控訴人に対し、何ら納得のいく説明もせず、突如として五年間も遡つて課税していること。

(二)  原判決別紙(一)の課税標準額の中には荷造運賃費も含まれているが、被控訴人はその全部につき課税していること。

(三)  前記別紙(一)においては、課税標準額とそれに対する物品税額、無申告加算税額が記載されているが、控訴人はそのほかに、何の通告もなしに加算税という名のもとに、本税の三割以上に当る七万三六〇〇円の支払を余儀なくされていること。

以上の各事実によると、本件製品が物品税法上の課税物品であるか否かを論ずるまでもなく、本件処分を違法と評価せざるを得ない。

(右に対する被控訴人の反論)

一  控訴人の主張一について

控訴人は、原審において、原判決別紙(二)の〈3〉の製品も含まれる(控訴人が製造したことを前提とした)本件処分がなされたこと自体は認め、ただ右製品が課税物件に当らないと主張していたものであり、控訴審に至つて右原審における課税要件についての自白を撤回して、新たに事実誤認を主張するのは、信義則上疑問があり、被控訴人は右自白の撤回に異議がある。仮に、右主張が認められないとしても、前記製品が控訴人の製造にかかるものであることは、証拠上明らかである。

二  同二について

否認する。

三  同三について

(一)  本件製品が課税物品に該当することは、控訴人に対し再三口頭又は電話により説明してきたが、結果的に控訴人が納得しなかつたのであり、五年間の遡及については、国税通則法七〇条に規定する更正等の期間制限内であつて、何ら違法性はない。

(二)  物品税法一一条三項及び同法施行令一五条二項によれば、課税標準に算入されない運送賃は、法定期限内に課税標準額申告書の提出されたものに限られるのであつて、本件事実はこれら規定に該当しないため、右適用がないものであるから、本件処分は適法である。

(三)  更に、控訴人は、加算税なる名目で不当な支払を余儀なくされているというが、これは法定納期限を経過後に納付された本件物品税額に対する国税通則法六〇条に定める延滞税の額であつて、何ら不当なものではない。

(証拠)〈省略〉

理由

控訴人の本件請求に対する当裁判所の判断は、左記の点を附加するほか、原判決理由と同一であるから、これを引用する。

(控訴人の当審における主張に対する判断)

一  成立に争いのない乙第四号証の七、弁論の全趣旨によつて成立の認められる乙第四号証の一ないし六及び八によれば、原判決別紙(二)の〈3〉の製品は、控訴人の製造にかかるものであることが認められる。右認定に反する当審における控訴人本人の供述は採用できず、他にこの認定を覆えすに足る証拠はない。従つて右の点に関する控訴人の主張は失当である。

二  物品税法施行令六条二号は、物品税法九条の非課税物品について、「特殊な性状、構造又は機能を有することに基づき物品税を課さないこととされる物品」は、「別表第一の品目欄に掲げる物品のうち、同表の非課税物品欄に掲げる物品」である旨規定しているところ、同表の非課税物品欄には、写真撮影用のいす又は腰掛けは掲げられていない。さすれば、本件製品が写真撮影業者によつて撮影用小道具として使用される営業専用の物品であるから、物品税法上の課税物品とならない旨の控訴人の主張は、何ら法令上の根拠を有するものではなく、採用できない。

三  その他控訴人指摘の各事実の存在は、何ら本件処分を違法ならしめるものでないことは、これらの点に関する被控訴人の主張のとおりである。

よつて、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 胡田勲 土屋重雄 大西浅雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例